
クリニック開業の基礎知識:立地選定・物件探し・診療圏調査のポイント
1. 開院場所の選定と立地調査
クリニックを開業するにあたって、立地の選定は経営の成否を大きく左右する極めて重要な要素です。都市部では医療機関の数が飽和状態に近づいており、競争が激化しています。そのため、単にアクセスが良い場所を選ぶだけでなく、地域の特性や将来的な人口動態、競合の有無など、多角的な視点から場所選びを行う必要があります。
✅良い立地条件とは、
・診療圏内の人口密度が高いこと
・競合となる医療機関が少ないこと
・通院の利便性が高いこと(最寄り駅やバス停が近く、駐輪場や駐車場が整備されていること)
また、周辺の生活道路との関係性も重要で、患者の生活動線に自然に組み込まれるような場所が理想です。
立地によって得られるメリットとデメリットも様々です。たとえば、駅前や商店街は集客力が高い一方で、競合が多かったり、駐車場の確保が難しかったりします。郊外の住宅地では高齢者やファミリー層の定着が期待できる一方で、診療圏が狭くなりやすいという側面があります。オフィス街では昼間人口は多いものの、夜間人口が少なく診療時間に制限がかかることが想定されます。
また、人口動態調査も欠かせません。総人口や年齢構成、人口の増減といった基本的な情報に加え、最寄駅の乗降客数やオフィス街の昼間人口など、エリアに応じた具体的なデータの収集が必要です。診療圏を見極めることは集患計画の精度を高め、無理のない事業計画の策定にも直結します。
2. 立地条件とWeb活用
物理的な立地条件に加え、現代ではインターネットを活用した集患も大きなウエイトを占めています。ホームページやGoogleマップの登録、SNSでの情報発信、口コミ予約サイトの活用など、オンラインでの情報発信力が集患力を左右する時代となりました。特に開業初期は認知度が低いため、戦略的なWeb対策が欠かせません。
たとえば、Webサイトで診療内容や医師のプロフィール、クリニックの方針などを明確に伝えることで、来院前に安心感を持ってもらうことができます。また、Googleマイビジネスへの登録はローカル検索対策(MEO)に直結し、近隣エリアの患者に見つけられやすくなります。
3. 物件の選定基準
開業場所が決まったら、次に重要になるのが物件選びです。診療科によって必要な床面積は異なり、たとえば内科や小児科、耳鼻咽喉科などは30~40坪前後が一般的ですが、整形外科などのようにCTやMRIを導入する科目では50坪以上必要なケースもあります。
✅診療科目別 医院開業必要スペース
診療科目 | スペース | 備考 |
---|---|---|
内科 | 30~50坪 | リハビリを行う場合は広め |
小児科 | 30~40坪 | |
耳鼻咽喉科 | 30~40坪 | |
整形外科 | 50~120坪 | CT・MRIを導入する場合は広め |
脳外科 | 10~60坪 | CT・MRIを導入する場合は広め |
眼科 | 30~50坪 | 白内障等の手術を行う場合は広め |
婦人科 | 30~50坪 | |
皮膚科 | 30~50坪 | |
泌尿器科 | 30~50坪 | 透析を行う場合は 100~200坪 |
精神・心療内科 | 20~35坪 | |
歯科 | 20~35坪 |
診療科目 | スペース | 備考 |
---|---|---|
内科 | 30~50坪 | リハビリを行う場合は広め |
小児科 | 30~40坪 | |
耳鼻咽喉科 | 30~40坪 | |
整形外科 | 50~120坪 | CT・MRIを導入する場合は広め |
脳外科 | 10~60坪 | CT・MRIを導入する場合は広め |
眼科 | 30~50坪 | 白内障等の手術を行う場合は広め |
婦人科 | 30~50坪 | |
皮膚科 | 30~50坪 | |
泌尿器科 | 30~50坪 | 透析を行う場合は 100~200坪 |
精神・心療内科 | 20~35坪 | |
歯科 | 20~35坪 |
✅クリニック開業は「テナント」か「一戸建て」か?
物件の形態としては「テナント」と「一戸建て」に大別されます。テナントは初期投資が抑えられ、短期間で開院が可能になる反面、天井高や電気容量、エレベーターの有無、階層(1階かそれ以外か)などの条件確認が重要になります。一方、一戸建ては初期投資が大きくなりますが、自由な設計ができ、資産形成にもつながる場合があります。
どちらの形態においても「100%完璧な物件は存在しない」との意識を持ち、昼・夜・平日・休日などさまざまなタイミングで現地を訪問して人の流れや雰囲気を確認し、納得いくまで吟味することが大切です。
4. 医業承継という選択肢
近年、既存クリニックの医業承継も注目されています。これは、診療所をそのまま譲渡・賃貸してもらい、患者やスタッフ、設備などを引き継いで開業する方法です。開業希望者にとっては、既存の患者をそのまま受け継げる点でリスクが大きく軽減されます。
譲渡する医師側にとっても、原状回復の義務が軽減されたり、退職後の事業整理がスムーズに進むなどのメリットがあります。ただし、前院長の診療スタイルが新院長の方針と合わない場合や、内装・設備の老朽化などでコストがかかるリスクも考慮する必要があります。
また、大阪府医師会が運営するドクターバンクなど、公的な医業承継支援も存在するため、こうした制度の活用も検討すべきです。
5. 診療圏調査と推定患者数の算出
開業場所を選定するにあたり、「診療圏調査」は必須です。これは、クリニックの集患圏を明確にし、どれだけの患者が見込めるのかを数値的に把握するためのものです。
診療圏には「第一次診療圏」(半径500m以内、徒歩10分圏内)と「第二次診療圏」(半径1,000m以内、徒歩20分圏内)があります。診療科や地域特性によってこの範囲は変動しますが、SNSやWebを活用することで、従来の距離的制限を超えて遠方からの来院も見込めるようになっています。
患者数の推定には、まず国勢調査や厚生労働省の統計資料を使って、診療圏内人口に対する受療率(診療科ごとに異なる)を掛けて大まかな数を算出します。さらに、競合クリニックの有無や年齢層、診療時間、医師の年齢、評判、交通アクセスなど多角的な要素を加味し、独自の補正を行うことでより実態に近い推定患者数を導き出します。
この推定患者数に基づき、収支計画を立てることが開業成功のカギとなります。
株式会社ナレッジでは診療圏調査に費用はかかりません。また、弊社では鉄道会社様と協力し駅前医療モールの開発や、医療ビルそのものの計画・建築などもおこなっております。様々な角度からご開業をお考えの先生方に適したクリニック開業場所をご提案いたします。どうぞお気軽にご連絡ください。
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